-rowitter- 開始の合図








特に決まった合図なんかなかった。
でも大体、キスの長さがその日の気分に比例してるんは解った。



「──あ、おかえ……っ、エミ?」

夕飯終わって先にシャワー浴びて、向こうがシャワー行っとる間ソファでごろごろしながら愛鳥と遊んどったら、出てきたエミールがただいまも無しに覆い被さってきた。
そんでそのまま口塞がれる。
急過ぎて入ってきた舌噛みそうになった。
何が何やら解らんくて、エミールの肩を押して離れてもらおうとしたものの、手首掴まれてそれも叶わんくなる。

「っ、ん……!?」

舌が歯の裏を擽ってきて肩が震える。
掴まれてへん方の手でもっかい押し返そうかしたけども、力入らんくてバスローブを少し握るだけの形。
その手にふっと微笑が零れてきた気ぃした。

「ふ……ん、ちょ……どないし、たん」

息吐く合間、それだけ何とか絞り出して、唇を舐めてくる翡翠に何とか焦点を合わす。
覆い被さってくる身体は体重を掛けるというよりは意図的に下腹を押し付けてくる。

「いえ、別に……?」

目を伏せて視線を外し、今度は下唇を食んでくる。
夕飯の時はそぅは思わんかったけど、何や機嫌悪いんやろか。
再び侵入してくる舌に擦り合わすよう自分のんも伸ばして掴まれた手首を揺らして拘束を外させる。
そんでちょっと離れた手に指絡めて軽く握り締めた。
何かしら不安やっていうんなら、ちょっとでもこっちから繋がりたい。

「……な、ここいやや」

上手い事息吸えんで浅い呼吸繰り返しながら、漸く狭いソファなん思い出して、小さく呟いた。
下は押し付けてくる癖にキス以外、他どっこも触らんのもよぅ解らんかったけど、取り敢えず火ぃ点けたんやったらどないかしてほしい。
オレの呟きに漸くエミールは目を合わせて、にこっと微笑んだ。

「ではベッドへ」

抱き上げられて運ばれながら、もしかして最近オレからは何も言わへんかったからなんかなぁとか、ぼんやり考えた。
……誘い方とか知らんし。

「相変わらず息継ぎは下手ですね」
「……マシにはなったやろ」

首に抱き着きながら、濡れた金髪を引っ張っておいた。









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もはや職など関係なくなっていた。
(表記詐欺になりそうで)