「シィ、離して?」

後ろから私を抱き締めたまま、肩口に額をぐりぐり押し付けて項垂れるプリーストの名前を呼んだ。
あぁこれじゃぁ本が読めない。
というかここ臨時広場なのに。

「人が見てるでしょ」
「……絢歌さんそんな事気にしないじゃん」

まぁね。
人の目とかあんまり、気にならなくなってきたけど。

「……どうしたの、今日は」

このままじゃぁ読書もままならない。
本に栞を挟んで閉じ、腰に回るキーシィスの腕を撫でた。
特に落ち込ませる理由は私の方には思い当らないから、大聖堂だろうか。
司教に怒られでもしたのかしら?

「……俺背ぇちっさくねぇし」
「うん? まぁ私よりは高いよね?」

全然話が見えない。
別に私キーシィスがチビだと罵った憶えはないけども。

「今日からミルク超飲むし」
「シィ成人してなかった? 今から伸びるの?」

本当に、何を言ってるのかなこの子は。
少し困惑していると視界の端でこちらに手を合わせているロードナイトが見えた。

『……夜白?』

そっとWisを送ると改めて頭を下げられる。

『すまない、彼に絢歌と同じ位の背丈かな、と……』
『あぁ……』

夜白に言われたからか。
どうにもキーシィスは私が心を開いてるという事で夜白に敵意を抱いている。

「……あのね、シィ」

呆れつつもまぁ、私は。

「ちょうどキスしやすいからそのままでいて」

この子が可愛いと思う。